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【勉強会】第二期 出口治明氏と古典を精読する会 の2回目 その2
きのうの続きから
きのうの記事はこちらから


p.152から

縦ひ朕の心に合はざるも、朕が亦、以て忤ふと為さず。若し即ち嗔り責めば、深く人の戦懼を懐かんことを恐る。豈にあえて更に言わん、や。

たとい我の心に合わないものでも、我はそれをさからうものとはしなかった。もし怒って責めたならば、深く人がおののき恐れる心をいだくことを恐れる。かくては更に諫言しようとするものが無くなるであろう と。


そもそも人というのは上にいる人に話をするとき『ビビるやん!』

もともとビビりやすい人とか、そうでなくても、上の人に物申すなんて『もっとビビるやん!』

そんなの怒ったりしたら『なにも言わなくなるでしょう!』というのを太宗はよくわかっているということなんです。



さて、太宗という人、ご存知の方はご存知ですが血を分けた兄弟を殺し、父親を幽閉して皇帝になった人です。

皇帝になるまでの道のりは平坦でなく、割と地方の現場を転戦させられます。

それらの過酷な経験を経て唐を創業した人です。


その意味からいろんな人を『よくみていた』ということが一つあります。

また、本をよく読んで賢くなって、それに加えて観察をすることによって、仮に経験をしていなくても理解できるという人はいるということです。


まぁ、人間は経験しないとわからない
と言われますが、それはある意味凡人のお話かもしれません。

本を読んでよく洞察するその資質が太宗にはあったとみるのが良さそうです。



懦弱の人は、忠直を懐けども言うこと能はず。疎遠の人は、信ぜられざらんことを恐れて言うことを得ず。祿を懷う人は、身に便ならざらんことを慮りて敢て言はず。 p.154


いくじがない人は、忠直の心を持ちながらも言うことができません。親密でない人は、信用されないであろうことを心配して言うことができません。官職地位を大事に思っている人は(うっかりしたことを言えば)わが身のためにならないであろうことを考えて言おうとはいたしません。 p.154


ここで言われているのは腐ってゆく組織にありがちな上に意見が言えない人の3つのパターンです。

1.最初はビビる。
2.(上司と)仲良くないし、信用されてないよねって思っている。
3.守りに入っている。

この3パターンのいずれに陥っても『上の人を諫めるなんて無理でしょう。』という話です。


要するに人間はいい加減でわが身がかわいい。それは誰だってそうなのだから、それをおしてまで上を諌められる人間なんてほとんどいないよ。
(次の節
敢て誠を竭す者は、乃ち是れ極めて難し。

って言っているのです。


だから、組織が崩れないためにはそのようなことに抗いながらも敢て上を諌められる人物を常に探さなくてはいけないってことになります。


貞観政要の大変優れている点はそんな人間性を十分に理解した書物であるということです。そう言ったことは簡単には得難い。得難いからこそ、今今にいたってまで教科書とされているのです。




さて、現代に置き換えてみましょう。
この3つのパターンに加えて4つめがあるのではないか?という指摘が参加者からありました。


すでに言い過ぎちゃって鼻っ柱を折られて言う気をなくしてしまったというパターン。

おそらく、そういうパターンが貞観政要に出てこないのはすでに文字通り首を切られて殺されてしまったからなのかもしれません。



ただ、現在においては会社組織で鼻っ柱をおられるというある意味失敗体験をしても殺されることはありません。と考えると4つ目のパターンは存在しそうです。

現実にはそういうことはあるわけでして聴いてもくれなさそうな上司にはどう対応したら良いのか?


これに関して出口さんは『どーでもいいことは上司の言う通りにしてあげておく。ただし、会社が倒れそうだという一大事であれば言うべきだろう』とおっしゃるのです。


そりゃそーだ。と、腹落ちするわけですがそれがなかなかうまくいかないのが人間です。


でも、そのあるときがきたら、この貞観政要の一説を思い出すことで一歩踏み出せるかもしれません。


知るということはそれだけの余裕を人に与えてくれるのです。



自ら知る者は明なり。誠に難しとなす。

中略

一日萬機、一人聽斷す。復た憂勞すと雖も、いづくんぞ能く善をつくさん。

中略

明鏡の形を鑒みて、美惡畢く見はるるが如し、と。
p.156


自己を知る者は明と称すべきである。しかし、それはまことに困難なことである。

中略

天子は一日のうちに無数にある政務を、ただ一人で聞いて取りさばくのである。だから、いかに心配して力を尽くしても、どうしてさいぜんを尽くすことができようや。

中略

鏡が形を映して、美も悪も残らず表すようなものであった と。
p.157


自分のことを理解するというのは
とにかく難しいということです。


自分の声すら本当はよくわからないのに
自分自身を理解するなんてほんとに無理ですよね。


ここで皇帝はとにかく
いろんなことを一人でやってるんだから
全部なんてとても無理じゃん
ってのをよくわかっている様子がみてとれます。


太宗は発見型の人なんですね。


発見型とは自分は特になにができるわけでもないけれど人の能力を発見して使うのが上手い人のこと。
こういう人は上司向きです。


それと対をなすのが発明型です。とにかく自分でなんでもやっちゃう。だから部下にはいいけど上司には向かないです。


それとともにここで鏡の話が出てきます。



三つの鏡の話は貞観政要のうちで最も有名な話だそうです。



人には三つの鏡が必要です。

一つめは 通常の鏡(この時代なら銅鏡)
とにかく自分の姿をみて、楽しそうにすること。上司が楽しそうにしていなかったら誰がそんな上司を真似たいと思うのか?ってこと。


二つめは 歴史
歴史に学ぶことで、同じようなことが起こった時、格段に対応できる能力に差が出るということ。


そして三つめが 人
自分のことはわからないものだ。だから手本として持つベきである。そういう人を近くに配置するとかロールモデルを持つと言ったイメージでよいと思います。


この3つの鏡はこれよりもずっと前のページに出てきますがここでもまた思い起こさせるように語られるのです。


貞観政要の特徴の一つですがとにかく
同じことを何度も手を変え、品を変えて繰り返します。


すこし賢い人なら『まぁ、また同じことを言ってるよ。』って読み飛ばしてしまうかもしれないです。


でもこれは人は忘れやすいものであるからこれだけ言ってもまだ達成できるものではないというのをよくわかった上でなんども繰り返しているのです。


奥深いことこの上ないです。


ということで、『また同じことを言っとる』という読み飛ばしは厳禁なのですよ。ということも含めて深く味わいたいですね。




author:ぷぅコッコ, category:セミナー・勉強会, 18:00
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